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ベニー率いる殲滅部隊は雑居ビルを包囲していた。都会の喧騒の中に異物のように混じった彼らは暗い色の背広にサングラス姿で懐に拳銃を忍び込ませている。部下のカンランが周囲偵察の結果をベニーに報告する。
「駄目です。正面玄関、裏口、窓、トイレ全てに鍵がかかっています」
「蛻の殻じゃないのか?」
「いえ、正面玄関前で邪教徒スタイルの奴が数人通りかかるのを見ています。電気のメーターもグルングルン動いてます。確実に中に人はいます」
「そうか、人払いは?」
そこに人払いにあたっていたスコロドンが現れた。
「うちのファミリーのゼネコンの奴らに無意味なアスファルトの舗装に当たらせました。夜までこのビル周辺には誰も入ることは出来やしません」
「ご苦労、手際が早いな」
ベニーは拳銃を出し遊底を引いた。辺りに鈍い金属音が響き渡る。
「スコロドン、このまま人払いを継続。工事の奴らにもバレないように。銃声に気がついた奴がいたら最悪の場合は」
「へへっ…… あいつらアスファルト剥がして穴掘ってるんですぜ? いざとなればそのまま……」
「そうならないことを願うよ」
その時、国内放送が国中に鳴り響いた。エリュホーム国では一時間毎にネェル・ファザーの肉声による時報が流れるのだ。
「人は皆、神の子。ネェル・ファザーが神託と共に十三時を知らせる」
昼の一時を迎えたところで作戦開始である。ベニーを含む殲滅部隊の実行班は身を低くして雑居ビル裏口へと向かう。殲滅部隊の一人、エピナルが裏口のドアノブにピッキングを仕掛け解錠を行う。
カチャ……
解錠が終わった。エピナルはベニー達に向かってOKのハンドサインを出す。それからゆっくりと扉を開けてクリアリングを行う。エピナルは周囲に誰もいないことを確認し、ベニー達に声をかける。
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