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「柊木さま。悲しいお話ですね。心が痛いです」
さっきまで夢中で読んでいた本を閉じ、ほぅとため息をひとつ。
「晴雪、ふたりはどうしたらよかったんだと思う?」
「そうですね……。今は耳もしっぽも綺麗な方が好まれはしますがここまではっきりした差別はありませんし、よく分かりません」
長い耳と丸いしっぽをフルフルと震わせると晴雪は少し考えるような仕草をみせ、柊木を少しだけ力の籠った目でみつめた。
「だけど、ぼくは雪に少しの勇気があったら話は違っていたかも、と思います。ふたりに幸せになって欲しかった」
柊木は目を見開いてすぐに細めた。
そしてにっこり微笑むと晴雪をその腕の中に抱きしめた。
「――――そうだね」
今度こそ間違わない。
今度こそ離さない。
今度こそ幸せになろう。
晴雪の長い耳をゆっくりと撫でると晴雪は柊木の腕の中で幸せそうに微笑んだ。
あぁ私の愛しいケモノは私の腕の中にいる。
-終-
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