流山医院

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「そんな悪いことすると、流山先生のおうちに連れてくよ!」  母の口癖、私が悪戯をしたときの脅し文句。  それがこれだった。私の子どもの頃から、ずっと。  そしておそらく、近所の家でもみんな、そう。  流山(ながれやま)医院。  それは私の住む田舎にある、ほぼ唯一の医院。  地域の人々は、ちょっと体の具合が悪いと、皆こぞってそこに通っていた。  まあ、そもそも、「病院に連れて行くよ」と言われて気持ちのいい思いをする子どもはそうそういないとは、思うのだけど。  それを置いても、流山医院という存在は、子どもの私にとって、恐怖の存在だった。  まず、外観。木造の薄いブルーの古い外壁は剥がれかけている。  さらに建物全体にみっちりと蔦が這っている。  はっきり言って見た目は、完全に廃墟。  そのおどろおどろしい見た目とは打って変わって、中は古いながらも清潔さが保たれていて、そこそこ落ち着く空間となっていたが。  ただ、入り口に貼られた人体解剖図と、薬臭い匂い以外は。
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