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「私もお腹減ったし。冷蔵庫見せてね」
リビングを出て台所の冷蔵庫を開けてみる。
卵、肉、野菜、調味料……料理をするには充分な食材がきちんと整理されて置かれている。
続いて冷凍庫を開けると、奥の方に冷凍うどんの束を見つけた。
リビングの方を振り返る。
「うどんだったら、食べれそう?」
「……うん」
「じゃあ、つくるね」
お椀、まな板、ざる、包丁……どこだろう。
勝手がわからないので、収納の扉を1つづつ開けて確かめる。
「包丁は左下の棚にあるよ」
すぐ後ろから啓太の声が聞こえた。
「休んでていいから」
身体をそっと押し返すと、観念したのかリビングの方に戻っていった。
鍋に水を張り、換気扇を回し、コンロのスイッチを回す。
手を洗い冷蔵庫からラップに包まれていた青ねぎと玉ねぎを取り出し、まな板において切っていく。
まな板を跳ねる包丁の音が、いつもより軽い。
適当に入れる出汁や調味料も、今日はちょっと考えて計量してから入れる。
香ってくるうどんの出汁も、いつもより心地よい。
自分じゃなくて人のために料理するのは、久しぶりだ。
これから、啓太のためにつくる機会も増えていくんだろう。
めんどくさかった調理も、やってみてもいいかなと思えてくるから不思議。
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