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「開いてるよ」
玄関のドアノブを回す。
台所でコップに水を入れて飲んでいた啓太が振り向く。
「お帰り」
「ただいま」
まるでここが二人の家みたいな挨拶を交わし、ぶら下げていたビニール袋を持ち上げて見せる。
「つまみも買ってきたよ」
「ありがと。テーブルに置いといて」
「うん」
リビングに入り、たっぷり中身の入ったビニール袋をテーブルの上に置こうとして、気づく。
今朝はなかった、蓋の開いた茶色の小瓶と缶が置いてある。
テレビCMでよく見るドリンク剤に、たしかエナジードリンクとかいうやつだっけ。
朝まで遊んだから疲れが出てたのかな。
それとも、今夜を楽しむため__。
ふいに後ろの方からそっと腕を回される。
背中を通じて広がっていく体温と匂い。
その温かさに、服を通してでも気持ちが伝わってきて。
「夏菜……」
回された腕に手を添え、抱きしめる。
朝の営みを思わせるかのように、触れた腕が熱い。
身体をよじらせ、啓太の顔を見る。
赤みを帯びた頬に指先をちょこんと触れて、感じる。
「啓太……」
揺れる瞳と瞳が交差する瞬間。
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