延長した、今夜。

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「お待たせ」 お椀と箸を2つのせたお盆をテーブルの上に置く。 昨夜は向かい合っていたけど、今日からは近くに座ってても、いいよね。 1つを啓太の前に、もう1つを斜め横に置いた。 「ほんとありがとう」 「いいの。さ、食べよ。」 いただきます。 重なった声に合わせて食べ始める。 「どう?」 「うん。美味しい。出汁がしみるなあ」 「よかった。って、啓太がふだん使ってる出汁だけど」 するするする。 明け方食べた固いラーメンと違い、柔らかくて弾力性のあるうどんが、ゆっくりと胃袋を癒やしていく。 啓太も無理なく食べれてそうだ。 出汁を全部飲み干すと、身体から心まですべて満たされた気分になった。 「ごちそうさま」 箸をお椀の上に揃えておき、小さくお辞儀をする啓太。 「足りた?」 「うん。ちょうどよかったよ」 「そっか。ちょっと待っててね」 私は台所に行き、もう一つの鍋から煮詰めた液体を2つのマグカップに注ぐ。 「どうぞ」 湯気とともに立ち上がる甘い匂い。 「わー。レモネードやん」 「そう。ハイボール用にレモン買ってきてたから」 二人してちびちびと飲む。 「うん。なんか落ちつくね」 微笑む啓太の額に、再び手の甲を当ててみる。 まだまだ熱を感じた。 「ひょっとしてさ、昨日から体調悪かったりした?」 体調悪いのに、私のために付き合ってもらってたとしたら、申し訳ない。 「そんなことないよ」 「いつから?」 「うーん。夏菜が帰って風呂に入って寝てたんだけど、夕方起きたら身体が熱くなってて」 「朝までつきあってもらったせいかな」 うーん、と言いながらテーブルに突っ伏し顔をそむける啓太。 「……好きって伝えられて、ほっとしたからだと思う」
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