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照れの残るしぐさとつぶやきに、胸がじんと熱くなる。
後髪を撫でたくなって手を伸ばそうとしたけど、途中でやめた。
「今日はもう、寝な」
「うーん」
「……悪化してほしくないよ」
「……わかった」
ベッドに上り横になる啓太。
さて、と。
ほんとは、このまま一緒にいて看病してあげたい。
でも、おさまっていたはずの熱い想いが、こぼこぼと湧き上がってきて、慈しむ気持ちと動作をきっと邪魔してしまう。
だから名残り惜しいけど、今夜は帰ることにする。
「じゃあ、今夜は帰るね」
そう言い残し立ち上がろうとしたところで、ぐいっと腕の裾を引っ張られた。
顔はそっぽを向いて、見せてくれない。
帰ってほしくない……のかな。
思ってたより、啓太って子どもだなあ。
自然と笑みが溢れる。
「明日も来るからさ、ね。」
小さい子どもに言い聞かせるように諭す。
幸い明日も日曜日で休み。土日をゆっくりすればすぐに回復するだろう。
けれど、なかなか放してくれない。
「……帰らない方がいい?」
「……5分だけ」
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