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「5分だけでいいの?」
意地悪く尋ねてみる。
「うん」
枕元の端にそっと座った。
啓太の右手がすっとのびてきて、私は左手を添える。
温かい。
静かになった部屋の中で手の温もりを感じていると、やがてすうすうと寝息が聞こえてきた。
いつの間にか顔をこっちに向け、すやすやと眠っている。
見下ろした無防備な顔の表情は、ほんのり赤いけど安らかに包まれている。
昨日は傍で見ることも触ることもできなかった頬。
そっと指先で撫でてみる。
やわらかい。
眠る表情を見ているだけで幸せな包まれる。
こんな顔を間近で見て、放っておいて帰れるわけ、ないよ。
テレビの横に置いてある時計を見ると、もう21時を回っていた。
約束の5分はもうとっくに過ぎている。
私と啓太の新しい日々は、ほんとにはじまったばかり。
この寝顔を見る機会は、これからもっと増えていくんだろう。
そうだったとしても、今夜だけは近くで見とれていたい。
「延長しとくね」
夢の中にいる彼の頬に、そっと唇を触れて告げた。
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