延長した、今夜。

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今しがた履いたばかりのパンプスをみぎ、ひだりと脱いで、再び部屋にあがる。 靴を脱いでいる間に、啓太はリビングの方に向かっていった。 ずっと鳴り続けていた目覚まし時計の音が止まって、部屋の中に静寂が訪れる。 私もリビングに向かって、立っている啓太に正面から抱きつく。 これまでずっと、隠してきた想いが溢れ出るのを止められなくて、指が手が足が唇が……身体全体が無意識に動いてしまう。 啓太の両手の掌がそっと私の頬を包みこみ、次の瞬間には唇を塞がれた。 さっきよりももっと強く、長く、押し当てられる。 啓太の想いに応えるように、両手を啓太の首の後ろに回し、ぎゅっと包み込む。 潰れてもう1つになってしまうくらい、強く引きつけて。 もっと。 もっと。 押しつけあっていただけの唇が、そっと離れて私の唇を撫ではじめる。 はじめて体験する感覚が、湖に生じた波紋のように全身に広がっていく。 体の奥に熱を帯びたマグマが湧いてきて、意識が溺れてしまいそう。 そそのかされた唇が誘いに応じ、甘い蜜を求めてダンスをはじめる。 はあ……。
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