がた、がた、がた。

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「いやいやいやいや、普通に怖いです先輩!ていうか押入れってあれですよね板打ち付けてあるアレ!」  俺は思わず絶叫した。3LDKの部屋のうち、先輩が寝室に選んだ部屋は和室である。そこの押入れが、いかにも何か封印してます!といったかんじで下半分に板を打ち付けてあるのだ。B先輩は笑いながら、“剥がすなよー”と言った。 「なかなかスリリングな部屋だろ!俺は毎日此処で寝てるんだ!」 「度胸ありすぎじゃないですか!?俺だったら絶対嫌です!無理です!!」 「まあそう言わずに。なんだよ、お前もうちに泊まりたいのか?それなら素直にそう言えばいいのにー。なあA?」 「断固拒否!」 「右に同じ!」 「なんだよつれねーなあ」  まあそんなかんじで。俺は先輩にいじられまくりながら、先輩の家でゲームしたり、先輩秘蔵のちょっとえっちなディスク見せてもらったりしていたわけ。いやほんと、あの爽やかそうな先輩がまさか熟女好きだとは思わなかった。人は見かけによらない、と思う。  まあ、そんなふうに楽しく過ごしつつ、最終的にはお酒とつまみで盛り上がってたわけだ。俺達がいる居間と先輩が寝ている和室は繋がってる。というか、あのガラガラガラーってかんじの何枚か重ねるような襖?っていうの?あれで区切られてるだけ。換気のために、途中からその襖も全開にしてた。当然、真後ろにあの板が打ち付けられた襖があったわけだけど、盛り上がっている間はそんなことすっかり忘れてたんだよな。  思い出したのは。段々日も暮れてきた時間になってからのこと。  三人でワイドショー見てたら、突然後ろから音が聞こえてきたんだ。  ドン! 「え?」  それは、拳を叩きつけるような音だった。  振り返って俺が、襖の下半分に打ち付けられた板を見て、その存在を思い出してしまった時。  まるで、そうだ俺は此処にいるぞ、と言わんばかりに音がガンガン鳴り出したんだ。殴るような音、それから襖全体を揺らすような音。それらが混じって、一気に部屋中を揺らすほどの騒音になっていったんだ。  ドン。  ガタン。  ドンドンガタドンドンドンガタンガタンドンガタドンドンドンドンドンガタドンドンドンガタンガタンドンガタドンドンドンドンドンガタドンドンドンガタンガタンドンガタドンドンドンドンドンガタドンドンドンガタンガタンドンガタドンドンドンドンドンガタドンドンドンガタンガタンドンガタドンドンドンドンドンガタドンドンドンガタンガタンドンガタドンドンドンガタガタガタガタガタガタガタガタ!! 「び、B先輩……っ」  俺が思わず震え声で言うのと、ビールをちみちみ飲んでいた先輩が声を上げて笑うのは同時だった。 「ぎゃははははやっべぇ!そんな旦那いたらマジでやべえ!やっぱ面白ぇなミルクセーキ!」  ミルクセーキ、というのはその時バラエティー番組に出ていたお笑いコンビの名前だ。その時番組では、指名したお笑いコンビにお題を与えて、それで短い漫才をさせるというコーナーをやっていた。どうやら、B先輩には本気で、後ろで鳴っている凄まじい騒音が聞こえていないらしい。  どうして、と俺が言いかけた時Aが立ち上がった。そして俺の腕を引っ張って告げるのだ。
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