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俺達は、二度とあの部屋に行くことはなかった。
というのも、そのすぐ後にあの部屋は異臭騒ぎになって――大家が、押入れ付近に蠅が集っているのを発見。板を打ち付けられた押入れの中で、ガリガリにやせ細って死んでるB先輩を発見したというのだ。
先輩の死因は、餓死。
一週間以上飲まず食わずで誰かに閉じ込められたんだろうってことで、俺とAのところにも警察が事情聴取に来た。俺達が倒れそうになったのは言うまでもない。だって、時間があわないんだ。俺達は死体が発見される五日くらい前に元気なB先輩と一緒に酒盛りやってるんだから。警察の話が正しいなら、それより前に先輩は閉じ込められていたってことになる。
もう、わかるよな?
俺達は、先輩じゃない誰かを先輩だと思って酒盛りしてた。
あの押入れの中にいたのは、怨霊ではなくて……。もしあの時俺達が気づいて、あそこから先輩を助けることができていたなら……。いや、でもそうしようとしていたらあの“先輩じゃない誰か”は俺達をどうしようとしたんだろうか。
気づいてしまった時、俺は涙が止まらなかった。恐怖と、それだけじゃない後悔で。
ただ、さ。おかしいのは、それだけじゃないんだよな。
そんなやばい事件があったのに、犯人は捕まることもなく。一年すぎた今もニュースになってる気配がなく。……そのマンションの部屋、まだ普通に貸し出されてるみたいなんだよ。
なあ、こんなことってあるか?確かにB先輩は死んだし、俺達のところに警察は来た。事件にはなったはずなんだ。いくらなんでも、二連続で人が同じ死に方をした部屋だぞ。普通はお祓いするし、二度とその部屋だけでも売らないようにするとか、とにかくどうにか対応するよな?
何か妙な力が働いてるのか、あるいは誰かが事実を隠そうとしているのかどうかはわからないけど、これだけは言える。
東京で、妙に一部屋だけ家賃が安いマンションがあったら。絶対借りるな、買うな。結局先輩が、幽霊に殺されたのか人に殺されたのかもわからないんだから。
……やっぱり心配だ。
最後にきちんと記載しておく。
そのマンションは、東京都●●区●●●●●●●●、マンションの名前は●●●●●●だ。いいか、そこだけは絶対駄目だからな。
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