辛杉家の憂鬱 シゲキ編

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 カレーは豚肉だろ、と思っているので、辛杉(からすぎ)シゲキは弟のシンと対立しがちだった。  なぜって? 弟のシンはカレーは牛肉だろと真っ向から正反対だからだ。兄弟だというのにそりが合わない。  妹のララも、黙っていれば可愛いのにカレーにジャムやタピオカや、夏なんてスイカを投入してしまうような変態ぶりだ。本当に、黙ってさえいれば可愛いのに。  そんなマイペース兄弟の長男として君臨するシゲキは、なかなかにたくましかった。  どれくらいたくましいかというと、カレーに使う豚肉の鮮度にこだわるあまり、家で豚を飼育して頃合いになったら自分でさばくくらいにはたくましい。  今庭の囲いの内にいる豚は、辛杉家三十四代目豚の『スリラーくん』である。命名はララがした。ちなみに一代前の豚の名前はシンがつけて、『佐々木小次郎』だった。二人とも、ネーミングセンスまでどうかしている。
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