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いつものように鳴るアラーム。
いつものように眠い朝。
いつものように唸るスヌーズ。
食パンを焼きトーストにする日々。
いつものように乗る満員電車。
いつものように鳴るチャイム。
いつものように始まる授業。
授業の合間に友達と話をする日々。
学校が終わりクラブも終わり少し病院に顔を出し。
そしてバイトに行く。
そんな毎日が続く。
楽しい日々。
充実という言葉では足りない。
そんな日々。
「自由さん来たよ」
太郎がそういって小さく笑う。
「影無くん、やっほー」
「やっほーだね自由さん」
「……あのね。
私、明日手術するんだ」
「え?」
「ドナーが見つかったんだ!」
「やったね!」
「……うん」
「元気ない?」
「うん。だって私助かるかも知れないんだよ?」
「うん」
「でも、それって誰かが死んだってことなんだから。
それって喜んでいいのかわかんないんだ」
「その人の分まで生きなきゃだね」
「うん」
自由は小さく頷いた。
「自由ちゃん。
手術前の診察があるからちょっとこっち来てもらえる?」
「あ、はい」
自由は銘にそう言われベッドから降りた。
入れ替わりに千春が入ってくる。
「それじゃ私はベッドのシーツの取り替えをするね」
「はい、じゃ僕は――」
「太郎くんは優しいから手伝ってくれるよね?」
「え?」
「ひとりよりふたり!そっちのが楽しいよ」
「そうですね」
太郎は千春の指示に従いながらベッドのシーツを変えた。
「私もね白血病だったんだよ」
千春の言葉に太郎は驚いた。
「高校生の頃に発症して……移植手術を受けて今はこんなに元気!」
千春が小さく笑う。
「そうだったんですか」
「両親は私にも医師を目指してほしくて双子の医師にしたくて頑張ってくれていた。
でもね、私は思ったんだ。
患者さんの命を救うのは医師様だけど。
心のケアをするのは看護師さんなんだって。
ある看護師さんを見て私は看護師を目指そうって思ったんだ」
「……反対されませんでしたか?」
「両親は反対した。
でも私も頑固だから通しちゃったんだ」
「もしかしてその看護師さんって千代田さんですか?」
「よくわかったね。凄い!
君はいい勘してるね!」
「千代田さんって幾つなんだろ……」
「そこは察そう」
「そうですね」
太郎はそのことに関して考えるのをやめた。
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