5人が本棚に入れています
本棚に追加
これは夢だ。
太陽の光がささぬ、薄暗い岩ばかりの河原。そこで幼い子供たちが、それぞれ足元の石を拾っては目の前に積み上げて石塔を築いている。聞こえてくるのは彼ら彼女らのすすり泣きや親を求める声。
河原の一画で喜声が上がった。あと少しで石塔が完成する者がいるらしい。声を上げたのは十歳ほどのくりくり頭が可愛い少年だ。目をきらきらさせて最後の石を塔のてっぺんに乗せようとしている。
だが、石塔が完成するより早くどこからともなく現れた巨大な鬼が、こん棒を振り回して石塔を打ち砕いてしまう。少年が鬼に飛び掛かるも、鬼の腕一振りで小さな体が弾き飛ばされてしまった。河原で背中を強かに打ち付けた少年は、のろのろと起き上がる。すでに鬼の姿はない。少年は唇を噛みしめてその場に腰を下ろすと、また一から石を積み上げ始めた。けれどもまた、その石塔が完成する頃に先ほどの鬼がやってくるのだろう。子供たちはこの地で完成しない石塔を積み上げ続ける。
これは夢だ。けれどもきっとあの世の現実なのだろう。
ここは賽の河原。親を残して死んだ子供の逝きつく場所である。
最初のコメントを投稿しよう!