第一章 依頼

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第一章 依頼

 手足の(しび)れが無くなっている。(のど)も熱くないし、腹痛も無い。毒が抜けたのだろうか。  そんなことを考えていると、真上から声がした。 「ほほ。ようやっと目が覚めたか小童よ。──否、やっとか」  甘く(とろ)ける声だ。そして同時に、この世の物ではない何か(だれか)なのだろうとも思う。  ゆっくりと目を開き、そして口を開く。 「あんたは……誰だ?」 「そうか、知らぬか。ま、それも良かろうて。はじめまして、じゃな。人の子よ。わしはコックリさん……とでも名乗っておこうか」  コックリさん? 確か、オカルトの用語だ。  文字を書いた紙の上に十円玉を置き、複数人で指を十円玉に乗せながら儀式をすると勝手に動いて質問に答えてくれるという、アレか?  冷静に記憶と知識を辿(たど)った所で、自分が未だに横たわっていることに気が付いた。  身体を起こして声の方を向く。  喋っていたのは妖艶(ようえん)な美女だった。  絶世であり、絶景であり、絶美。  およそ人の形を取ってはいるが、神はこれほど整った生命を人間に与えるだろうか?  顔や身体にばかり意識が行くが、決定的であったのは狐の耳と尻尾だろう。  「……狐」  「如何(いか)にも。さて、わしはお前を知っておるが、これは形式というやつじゃ。名はなんと申す?」  名前。俺の、名前。    「俺は……ナギト。砂原(さはら) 凪都(なぎと)だ」
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