第2章 アーンヴァール

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「証明はできる。映像を撮っておいたからな」 「なっ……!?」  ナギトはそう言って、ガスマスクの目を光らせた。  光は壁に当たり、映像を写し出す。 「ザザッ、ザー……」 「……誰か! 誰か助けてっ!!」 「おー、嬢ちゃん。そんな大きな声も出るんだなぁ。ま、誰も助けになんか来ねーがなァ!」 「そうだぜ、おとなしく黙ってろ!」 「──黙るのはお前らの方だ。汚物ども」 「ザザッ、ザー……」  映像はナギトの主観視点、有り体に言えばFPSの視点で写し出される。  そこには、ニーナが護衛に襲われ、ナギトが助けた一部始終が音声と共に残っていた。  周囲にいた冒険者たちも含め、ナギト以外が絶句する。  最初に声を上げたのは受付嬢だった。 「こ、これって……! 最上級の魔法、〈レコード〉!?」  その声につられて、冒険者たちが騒ぎ始める。 「おいおいマジかよ! それとも〈レコード〉を収めたマジックアイテムか!? 城が買えるレア物だぞ!」 「いったい誰なの!?」 「……参ったね。そりゃ反則だ」  護衛のリーダー格は諦めた表情を浮かべ、ナギトを見る。  ナギトはそれに答えず、静かに考えを巡らせる。  (……映像技術が一般まで浸透していない文化圏か。この状況では使わざるを得なかったが、目立ち過ぎだな。次は控えるべきだ) 「ナギトさん……貴方はいったい……?」 「さっきから言っている。転生者だ」  ざわめきが落ち着いてきた所で、受付嬢は改めて告げる。 「ええと、おほん。証拠も確認しましたので、規則に則り、貴方たち3名の拘束、及び数ヶ月の強制労働を課します」  (……思ったより刑罰が軽いな。日本の常識、価値観は通用しないと考えた方が良さそうだ)  ナギトはそう思った。  連行されていく男たちを悲しそうな目で見つめ、やがてニーナは自分の頬を軽く叩いた。  そして、ナギトに向き合う。 「今回は本当にありがとうございました、ナギトさん」 「礼はいい。報酬を頼む」 「そうですよね。ええと、これぐらいでどうですか?」  ニーナは懐から皮製の巾着袋を取り出し、中から金貨を2枚出した。  ナギトはそれを受け取って、ガスマスクの能力で鑑定する。  名称:ゴールド金貨。日本円換算で1枚5万円  (……ふむ、悪くない) 「それで手を打とう」 「…………あ、あの……ナギトさん」  ばつの悪そうな顔をして、ニーナは口ごもる。  言いにくいことがあるのだろう。 「どうした?」 「その……ですね。もし良ければ、私の護衛を……してもらえませんか?」
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