第2章 アーンヴァール

8/8
前へ
/20ページ
次へ
 そういえば、と。ナギトはニーナの立場を思い返す。  (修行の旅に出るために護衛を雇ったが、それに裏切られる。つまり、今は誰も護衛がいない……か)  ナギトは日本のことわざを思い出す。  “袖振り合うも多生の縁”。 「ああ、そちらも引き受けよう」 「本当ですか! ありがとうございます!」 「その代わり、俺の仕事も手伝ってもらう。各地で出現している瘴気の調査と根絶だ」 「瘴気……? そんな話は聞いたこと無いですが……。ええと、私は宛の無い旅をする予定だったので、目標ができるのはむしろ助かります」 「そうか、なら良い。早速、情報を聞きに行くぞ」  ナギトは受付嬢に声をかける。 「王都セントラル周辺で、瘴気……毒ガスや疫病の報告はあるか?」 「え? ええと、どうしてそんなことを……」 「いいから教えろ」 「は、はい……。セントラル周辺では無いはずです。でも、西の首都ウエストの方で疫病が流行っているとか何とか、風の噂で聞きました」 「ふむ……感謝する」 「あ、ナギトさんには色々と聞きたいことが…………………待ってくださ……待っ…………」  ナギトは受付嬢から即座に離れ、ニーナと共に冒険者ギルドから出た。  先程のひと悶着で注目を浴びるのが嫌になったからだ。 「どうでしたか?」 「西の首都ウエスト周辺に情報がありそうだ。そちらに向かうぞ」 「ちょうど私が行こうとしていた所です。それじゃあ案内しますね!」 「頼む」  こうして、旅の回復術士ニーナを仲間に加えたナギトは、瘴気の情報を求めて西の首都ウエストへと向かったのだった……。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加