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浄化1 流行り病
ナギトとニーナは西の首都ウエストへと向かって歩いていた。
鬱蒼とした森の中を、並んで歩く。
「ここの森には詳しいのか?」
「いえ……。初めて来ます」
「そうか。ならば、周囲をよく観察しておけ」
「えっと、どうしてですか?」
ナギトは数秒の後、指を3本立てて説明を始めた。
「…………第一に“逃げ道の確保”。視界の悪い森では急に戦闘になることもあるからな。それと、“食料の確保”。これは野宿を想定して動く為だ。最後に、“生態系の把握”。情報を集めておけば、何かと役に立つ。以上だ」
「……! なるほど……」
「念の為に聞いておくが、野宿の経験は?」
「…………お恥ずかしながら……。前にパーティーを組んでいた頃は、日が昇ったら出かけて、日が沈む前に宿屋へ泊まる生活を送っていました」
「そうか……」
(箱入り娘の一歩手前だな。そこをあの男たちに悟られて襲われたのだろう)
ナギトはニーナの危機管理能力の低さを心配していた。
「テントや寝袋は……持っていないか?」
「……夜になる前に次の村へ着ければいいかな、と……」
「……」
(……正直に言って、先が思いやられる。これでよく旅をしようと思えたものだ……)
ナギトは更にニーナのことを心配していた。
「……とはいえ、俺も今はキャンプ道具が無い。陽がある内に宿を見つけないとな」
「はい。あ、でも、もう少し歩けば村があるそうですよ」
「本当か?」
「旅には必要かと思いまして、地図を買っておいたんです。どうぞ」
「見てみよう」
ニーナは折り畳まれた紙の地図を服のポケットから取り出し、ナギトへ手渡す。
ナギトが地図を見ると、確かにセントラルの西門から西の首都ウエストまでの道と、村や洞窟などのロケーションが簡易的に記されていた。
(……今はここの森か。キノコの絵が描かれているが、名産なのだろうか? あるいは毒キノコに注意しろというマークかもしれない。村は…………かなり遠そうだ)
「縮尺が分かりづらいが、村までは遠い可能性がある。慢心せずに早めに村へ着いておくべきだ」
「慢心……。そうですね、そうしましょう。……きゃっ!」
ニーナは気持ちを入れ替え、手を握って意気込む。
と、同時に、木の根に足をひっかけて前のめりに転んだ。
ナギトはすぐに水の腕を出し、ニーナを抱え起こす。
「怪我は無いか?」
「うぅ……、ありがとうございます」
ナギトは水の魔法を使い、ニーナについた土埃などの汚れを綺麗に洗い流した。
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