浄化1 流行り病

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 ショカの村。  周りを森に囲まれた凹地にある隠れた農村、という印象を受ける。  広い畑に(わら)の家。  都会の人間が想像する、のんびりした田舎の風景……を絵に描いたような村だ。  ……不謹慎だが、ここで火事が起きたら為す術もないだろう……と、ナギトは考えた。 「お客人、こちらへどうぞ」 「のんびりしていて素敵な村ですね」  (……野菜を育てる農業と、木を(まき)にする林業が生活の要になっているようだな)  ナギトは村の人間を観察し、そう仮定する。 「ありがとうございます。……っくしょい! 失礼……。こちらが宿です。何もない村じゃが、ごゆっくりお休みなされ」 「ご厚意、感謝します」 「助かる」  案内を終えた村長は、先ほどの木を切りに戻っていった。  ナギトとニーナは宿に入る。  すると、受付で本を読んでいた女性が2人に気付き、明るい声で出迎えた。 「お、久しぶりの客だ。いらっしゃい!」 「2人分の部屋、空いてますか?」 「もちろん空いてるさ。今日はあんたたちの貸し切りだ」 「……えっと、他に泊まっている人がいないんですか?」  受付の女性はきょとんとした顔をしてから、大きく笑う。 「はっはは! まー、そりゃそうなんだが、改めて言われると面白いな! ……ったく、村で病が流行りだしてから、ちーっとも客が来なくなっちまったんだ。細々と貯金を切り崩す毎日よ!」 「それは大変ですね……」  ナギトは情報収集の為に話題を切り出す。 「……村人は全員が病にかかっているわけではないのか?」 「ん? そりゃそうさ、少なくともあたしゃピンピンしてるよ。特に辛そうなのは村長さんだけど、他は……誰がどうだったかな……覚えてないわ」 「病が流行りだしたのは、どれくらい前からだ?」 「そうだねぇ、1か月前くらいかな……体感だけどさ」 「……そうか。感謝する」 「それを聞いてくれるってーことは、もしかして調査に来た冒険者さんかい? いやぁ、ありがたいねぇ! 早いとこ解決して、早いとこ客に戻ってもらわないと商売上がったりだ! 頼むよ、お二人さん!」 「えぇ!? あの、ちが……もがもが……」 「似たようなものだ」  否定しようとするニーナの口を、ナギトは水の腕で軽く抑える。  ニーナも何かを察したのか、渋々ながらも従った。 「んじゃこれ、部屋の鍵ね。ごゆっくり!」 「……鍵が足りないぞ」 「おっと、こりゃ失礼。仲睦まじい夫婦かと!」 「俺はただの護衛だ……」  ナギトは水の腕を解除し、ニーナと共に宿屋の2階へと、階段を登った。
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