9人が本棚に入れています
本棚に追加
剣と魔法の世界、つまるところファンタジー世界。誰もが一度は憧れる夢と希望に溢れた楽園。
……と、友人が言っていたのを思い出す。
俺はあまりゲームもしないし、漫画も読んでは来なかった。小説なんて以ての外だ。
とはいえ、自然に溢れていて機械が無いのは好印象だ。
さぞや空気が綺麗なのだろう。
……………………いや、そうだった。瘴気が発生しているんだったな。最悪だ。
「どうすれば瘴気を無くせる?」
「それが分からぬので困っておる。お前に頼みたいのは瘴気の調査と根絶じゃ。無論、異世界で生きるための能力はわしが授けよう」
「能力。魔法か?」
「そうじゃな。他にも身体を頑強にしたり、目を良くしたり、病にかからぬように加護を授けるとかな。わしに出来ることにも限りはあるが、大抵の望みは叶うぞ」
「…………考えさせてくれ」
「そうか。時間は止まっておるでな、ゆっくりと考えよ」
コックリさんの話を纏める。
要求:瘴気の調査と解決
場所:異世界アーンヴァール
装備:魔法や身体能力などの増強
こちらのメリット
・2度目の人生を送れる
・魔法を使える
・(暫定だが)綺麗そうな世界に行ける
こちらのデメリット
・仕事内容の難易度などが不明瞭。最悪の場合、死ぬまで重労働の可能性。
・剣と魔法の世界、つまり戦闘する可能性が高く、危険性がある。
懸念:コックリさん……本名も分からない彼女を信用できるのかどうか。
……こんなところか。
第2の人生の岐路に立たされてこそいるが、あの時よりも深刻に悩む必要はない。
どうせ既に死んでいるのだ。美しい狐に化かされてみるのも良いだろう。
とはいえ慎重に、焦らず考えよう。そうして出した答えに苦労することはあっても、後悔はしないはずだから。
「よし、決めたぞ」
「申してみよ。一切無比の魔法か?無類の強さか?使い尽くせぬ金銀財宝か?」
「俺の要求は──」
……そしてナギトは異世界アーンヴァールへと転生した。
彼を待ち受けるのは希望か、絶望か。
見送った狐は一人で笑う。
「く、ははは!ガスマスクと防護服をくれだと?後にも先にもそんな要求する者はお前だけじゃろうて!まったく愉快な男よ!はっははは!」
最初のコメントを投稿しよう!