第一章 依頼

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 剣と魔法の世界、つまるところファンタジー世界。誰もが一度は憧れる夢と希望に溢れた楽園。  ……と、友人が言っていたのを思い出す。  俺はあまりゲームもしないし、漫画も読んでは来なかった。小説なんて(もっ)ての(ほか)だ。  とはいえ、自然に溢れていて機械が無いのは好印象だ。  さぞや空気が綺麗なのだろう。  ……………………いや、そうだった。瘴気が発生しているんだったな。最悪だ。 「どうすれば瘴気を無くせる?」 「それが分からぬので困っておる。お前に頼みたいのは瘴気の調査と根絶じゃ。無論、異世界で生きるための能力はわしが授けよう」 「能力。魔法か?」 「そうじゃな。他にも身体を頑強にしたり、目を良くしたり、病にかからぬように加護を授けるとかな。わしに出来ることにも限りはあるが、大抵の望みは叶うぞ」 「…………考えさせてくれ」 「そうか。時間は止まっておるでな、ゆっくりと考えよ」 コックリさんの話を纏める。  要求:瘴気の調査と解決  場所:異世界アーンヴァール  装備:魔法や身体能力などの増強   こちらのメリット  ・2度目の人生を送れる  ・魔法を使える  ・(暫定だが)綺麗そうな世界に行ける こちらのデメリット  ・仕事内容の難易度などが不明瞭。最悪の場合、死ぬまで重労働の可能性。  ・剣と魔法の世界、つまり戦闘する可能性が高く、危険性がある。    懸念:コックリさん……本名も分からない彼女を信用できるのかどうか。  ……こんなところか。  第2の人生の岐路に立たされてこそいるが、よりも深刻に悩む必要はない。  どうせ既に死んでいるのだ。美しい狐に化かされてみるのも良いだろう。  とはいえ慎重に、焦らず考えよう。そうして出した答えに苦労することはあっても、後悔はしないはずだから。  「よし、決めたぞ」  「申してみよ。一切無比の魔法か?無類の強さか?使い尽くせぬ金銀財宝か?」  「俺の要求は──」  ……そしてナギトは異世界アーンヴァールへと転生した。  彼を待ち受けるのは希望か、絶望か。    見送った狐は一人で笑う。 「く、ははは!をくれだと?後にも先にもそんな要求する者はお前だけじゃろうて!まったく愉快な男よ!はっははは!」
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