9人が本棚に入れています
本棚に追加
第2章 アーンヴァール
「ここは……」
目を覚ました瞬間、ナギトは草原に立っていた。
爽やかな風が防護服を撫でる。
「うっ! 草! 虫!」
鬱陶しそうに足をどける。
「……そうだった。こういう時こそ魔法を。《ウォーターバリア》!」
魔法を唱えると、ナギトの身体に沿って薄い透明な水が形成された。
コックリさんから授かった能力、道具はそこそこ多くあるが、その中でも目を引くのはガスマスクに防護服、そして水属性の魔法、全てである。
一つ一つ解説していこう。
ガスマスクは日本で市販されている物と違い、異世界に適応できる用に魔改造されている。
隠密行動を想定してシュコーという呼吸音がしない、汚れた空気を浄化して澄んだ空気に変える、視界が確保できる……等。
防護服も同様に魔改造されており、防刃・耐衝撃・耐寒・耐熱に優れ、極寒の海でも溶岩でも泳げる仕様になっている。
付着した汚れは即座に消滅し、常に清潔を保つのだ。
そしてガスマスクと防護服はどちらも装備品というより魔法で顕現している幻のようなもので、瞬時に着脱が可能となっている。
水属性の魔法。
ナギトは潔癖症であるため、どの魔法がいいかと問われたら食い気味で「水!」と答えるほどに清潔さにこだわる青年だった。
他の全てを差し置いても水を使いたいと願った為に他の属性の魔法は使えないが、水属性の魔法はナギトの想像力に比例して自由に扱うことができる。
水を操りたい!と思えば操れるし、水を弾丸のように射出したい!と思えばできるのだ。
文字通り最強。
そんな所謂チート能力と装備を授かっていても、最初に使ったのは草や虫に触れないようにする目的のバリアなのだった。
ナギト本人にとっては自分の身を守ること、そして清潔に保つことが何よりも優先されることなので、至って真剣だ。
「これで良い。……いや、念の為に3重くらいにしておくべきか……?」
ナギトが使った即席の魔法、《ウォーターバリア》は1回貼っただけでも並大抵の武器では太刀打ちできない強度を誇っている上、それを突破しても防護服がある。
虫はおろか、並の冒険者にも負けることは無いので、どう考えても過剰防衛だろう。
最初のコメントを投稿しよう!