第2章 アーンヴァール

2/8
前へ
/20ページ
次へ
 コックリさんの依頼は“瘴気の調査と解決”。  まずは瘴気を見つけ出すことが先決だが、それには情報収集が欠かせない。  何事であっても無策で挑むのは愚か者のすることだ。ナギトはそう考えていた。  (……とはいえ、見渡す限り何もない草原。人もいなければ建物も無い。ここに滞在する意味は薄いだろうな)  草原から得られる情報は無い。  ナギトは早々に見切りをつけて、その場から移動を開始した。  (最優先は衣食住の確保。飲み水は魔法で補える上に衣服はこの防護服で事足りる。つまり必要なのは住居だ。最低でも洞窟を見つけなければ)  ナギトは人一倍慎重であり、そして、現実的に物事を考える青年だった。  何故、洞窟なのか。  それは、前後左右いずれか3方が壁に囲まれていて、雨露を凌げる場所を探す為だ。  野生動物の危険がある場所では、常に周囲の警戒をしなければならない野宿よりも、一方向のみの警戒で足りる洞窟の方が拠点としては好ましい。  無論、敵が知能ある生命体ならば入り口を塞がれたり待ち伏せされる危険も生じてくるが……。  少し歩いた所で、ナギトは森を見つけた。  (草原より森の方が資源は多いな。虫は多くなるだろうが……背に腹は代えられん)  ナギトは思慮の後、木々がまばらに立ち並ぶ森へと足を踏み入れた。  (……キノコが生えている。毒は……無し。可食だ。拾っておこう)  ナギトは道すがら有用そうな植物を採取し、防護服のポケットに入れた。  ──コックリさんに貰った防護服には無限とも呼べる収納機能が備わっており、中に入れた物は腐らず壊れず好きな時に取り出せる。端的に言ってしまえばアイテムボックスだ。  また、ガスマスクには対象のステータスが見れる鑑定機能が備わっている。  ナギトは植物や動物が有毒か可食かを判別する為に使っているが、戦闘の際にも敵の弱点などを知ることができる為に有用である。    そうやって森の中を探索していると、遠くの方からかすかに声が聞こえてきた。 「……!……」  どうやら女性の声らしい。  ナギトは情報を得るために声の聞こえた方に向かう。  (原住民か? もしそうならば交渉を試みるべきだ。調査活動をする上で現地協力者は不可欠……加えて、集落を見つけられれば格段に効率は上がるな)  ナギトは打算的な考えを持っていた。  生い茂った草むらを、腕の形にした水の魔法で掻き分けながら進む。  例え水のバリアを3重に付与している状態であっても、ナギト自身が直接触ることは無い。  彼は異様なまでに潔癖だった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加