第2章 アーンヴァール

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 王都セントラル。  異世界アーンヴァールの大陸中央部に位置する巨大な都であり、交易が栄えている。  レンガで舗装された道と、立ち並ぶ住宅。  道には軽食や装飾品を販売する屋台が場所を取り合いながら商才を競い合う。  西側の大門は開きっぱなしの状態だ。  頑強な作りの木造の扉門は首を見上げるほどに高く、そして広い。  これが閉ざされていたならば、開けるのに人手が数十人は必要になるだろう。 「検問は無いのか?」 「ええと……?」 「……怪しい者が入り込まないか、荷物の検査をする見張りの事だ」 「あ、門番のことでしょうか。セントラルは人の往来が激しいので、廃止されたそうです」  ナギトは辺りを見渡す。  (……確かに、荷馬車を連れた通行人が多いな。危険性の排除よりも利益を取った国家なのか?)  国益だけを考えるならば、誰でも入れる門を開くのは一つの戦略としてアリだ。  人が集まれば金も動く。金が動けば人も集まる。  無論、良からぬ行いをする者にとっても都合の良い隠れ場所となってしまう。  ……だが、それもまた、裏の金が動くことに一役買う結果となる。  治安が悪くなれば自治体も戦力増強に資財を投じるようになる。マッチポンプであり、いたちごっこだ。 「それで、何処へ運べばいい?」 「はい。このまま真っ直ぐ行くと、冒険者ギルドがあります。そこまでお願いしますね」 「冒険者……ギルド?」  初めて聞く言葉だ、とナギトは思った。  冒険者というのは……古いアクション映画で遺跡を探検する者、というイメージしか湧かない。  (……しかし、ここは異世界だ。そういう職業が一般的に存在してもおかしくはないか) 「冒険者ギルドに聞き覚えが無いのですか? やっぱり、ナギトさんは記憶が混濁して……」 「混濁ではない。さっきも言ったが、俺はこことは別の世界から転生してきた」 「……(漂流者(ナガレビト)特有の妄想言動……可哀想に……) あ、見えてきました。左手に見える大きな建物が冒険者ギルドです」  ナギトはつられて左側を見る。  確かに大きい。  日本知識で例えるなら、学校の校舎より一回り小さいくらいだろうか。    剣に杖、鎧にローブ。  戦闘を考慮した服装の者たちが冒険者ギルドに入っていくのが見えた。  ここも扉が開きっぱなしになっている。  (……衛生環境は大丈夫だろうか?) 「一階は酒場と冒険者ギルド。二階から三階は宿屋になっているんです。さ、入りましょう」 「ふむ……」
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