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序章
「……何処だ、ここ」
起き上がった俺の目の前に広がるのは大海原。
背後には木々。
左右は海岸線。
「あー……これは夢だな」
多分、無人島に取り残された的な夢だろう。
夢占いは詳しくないが、無人島で1人取り残される場合の夢ってどんな感情のときに見られるんだろうな。
「しっかし……リアルだな」
潮の香りや手のひらから伝わる砂の感触。
「見渡す限り海ばかりだし」
耳を打つ波の音。
「こんなところに、リアルで取り残されたら間違いなく死ぬな」
鳥たちがギャアギャアと騒ぎ立てて飛び立つ音。
「このままここで寝てても、その内に目覚める気もするが……めちゃくちゃあっついな、ここ」
強風と風切り音。
「なんか風も強くなってきたし、こんなときに台風か? ちょっと雨を凌げる場所を探さないと……」
巻き上げられる砂と振動。
「何だ?」
慌てて立ち上がった俺は振り返ると、さっきまでは無かったはずの大きな壁が、俺に影を落としていた。
「いつの間にこんな壁……?」
謎の壁に向けた視線を下から徐々に上向かせる。
鋭い爪に大きな翼、茶色の硬そうな鱗、そして剥き出しの牙。
視線がてっぺんに達したところで、ギョロリと膨らんだ目に睨まれ、俺は思わず「おおーぅ……」と妙な声を出してしまった
ええ、これは『ドラゴン』という種族ですね、間違いない。
……ドラゴン?
ニューゲームを選んだ直後にボスと遭遇するゲームってなんだよ。
いや、ゲームじゃなくて夢なんだが。
しかし……待てよ?
このドラゴン、必ずしも敵とは限らないのでは?
そうだ、コレはきっとあれだな、最初に能力とか何とかを色々授けてくれる神様の代わりに出てきたドラゴンだろう、そうに違いない。
ドラゴンは賢いと聞いたこともあるし、これはワンチャンあるかもしれない。
「……あ、あはは……初めまして。私は小野村 孝太郎です、よろしく……ね」
こんな感じで話をすればきっと分かってく――
轟音。
鼓膜が破れるんじゃないかってくらいの音が俺を襲い、俺は打ち上げられた魚みたく無残に砂の上にひっくり返った。
口の中に入った砂を、ぺっぺっと吐き出す。
「はは、だ、大丈夫……大丈夫だ……夢。これは夢だ……」
そう言いながら、俺は右腕を見ると、転んだときに切ったのか、真っ赤な血がたらりと流れ出していた。
そして、その傷がぴりっと痛む感覚が体に走った。
……違う、これは。
「……これは、異世界転移だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
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