Gift for you

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 昔から本が好きだった。活字の向こう側にある世界に触れること。主人公たちとともに人生を歩むこと。  本の中にはもう一つの世界があると信じていた。一文字一文字から溢れるのは感情とか、見たことのない景色とか不思議なモノ。  学校の先生は本ばかり読んでいる私を心配した。「友達と遊びなさい」と。正直うんざりした。  本を読んでれば毎日充実していたし、友達といるよりも楽しかった。だから私は無理して友達と一緒にいる必要なんてないのだ。  いつからか頭の中でお話を作ることが増えた。キャラクターが勝手に動いて喋って、結末は自分にも分からないお話。  そして、その脈絡のないお話を形にしたいという欲が芽生える。最初に書いたのは小説とも呼べない仕上がりだった。何を書いても途中で飽きてしまって、完結させることができなかった。  それから数年、高校では何か部活に入らないという決まりで、なんの気無しに文芸部に入部した。    最初の部誌に書いた小説は、それはそれは酷いものだった。燃やして灰にしてしまいたいくらいに。  小説を書き始めると新たな欲が出てきた。誰かに自分自身の世界を見てもらいたい。いくつかある小説投稿サイトから、使いやすさや自分の作風に合うようなものを見つけ出した。  ネットに小説を投稿する。そのことはとてもハードルが高かった。不特定多数の人に自分の小説が読まれる。  下手だとか、読みづらいとか、こんなのは小説じゃないとか言われるんじゃないか。悪い想像はジワジワと広がっていく。  投稿ボタンをクリックする。たった指一本の動作。その行動がとてつもなく勇気がいるなんて知らなかった。  誰の目にも触れさせないで自分の中で物語を完結させることも考えた。だけど、やっぱり欲が出てくる。  散々悩んで投稿ボタンを押した。批判されてメンタルがボロボロになるのも覚悟の上だ。  だが、心配は杞憂だった。初めていいねをもらった日、恐る恐るコメントを見て喜びに溢れた日、ユーザーさんと好きな作家について語り合った日。  その日々の一つ一つの出来事を、私は決して忘れない。ときには厳しい意見を言われることもあった。その日は落ち込んでサイトを開くこともできなかった。  執筆のモチベーションが下がったり、落ち込んだりしたときは、レビューやコメントを見る。褒め言葉は沈んだ心によく効く薬だ。  そうやって今日も明日も小説を書いている。  何かを始めるってとても勇気のいることだと思う。どうしたらいいのか分からないし、びっくり箱を開けるときみたいに怖い。  今、投稿ボタンを押そうと悩んでいるあなたへ。どうかちょっとの勇気を出して、箱の中身を見てみてほしい。  箱の中身は思わぬ贈り物が入っているかもしれないから。  
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