談雑9:ネタバレの根(スイカ)

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談雑9:ネタバレの根(スイカ)

「“スイカ”、読みましたよ」 「ありがとうございます。司さんが短い話を書くよう励ましてくれたので、最近はけっこう意識しています」 「良い心がけですね。長くない話、という点ではまあまあでしたね」 「『長くない話』? いやいや、短かったでしょう? サクッと読めたはずですけど」 「いやあ、サクッというわけにはいきませんでしたね。強いてオノマトペで表現するなら、モンッ、テスッ、キュッという感じですね」 「それって、オノマトペとは言わないんじゃないかなぁ……人名に近いのでは?」 「そこはどうでもいいんですよ。要点は、左くんの『スイカ』はモンッ、テスッ、キュッと読める作品だ、という点です」 「……深く追求せずに流すのが無難なのでしょうね」 「ん? 何か言った?」 「いえいえ。それで、『スイカ』はどうでした? 物語的に」 「うーん……ちょっとハズいかな」 「えぇ!? いったいどこが?」 「だって、海辺で、若い男女が水着姿で、あんなことを経験するんですよ」 「司さん、あなたね、そんな言い方したら、まだ読んでいない人は誤解するでしょう? やめてくださいよ」 「あり得ませんよね。女の子の身体にあんなことが起こるなんて……思い出すだけで恥ずかしい」 「こらこら、やめてください」 「じゃあじゃあ、左くんは、この作品、どんな気持ちで書いたんですか?」 「これはですね、私がエブリスタさんに作品をアップするようになって初めて取り組んだ作品なんです。エブリスタさんは頻繁にテーマを与えてくださいますよね? 『ひと夏の想い出』というテーマで募集があるのを見つけて、書いたというわけです」 「あー、ほぼ定期的に開催している『妄想コンテスト』ですね?」 「そうです、そうです。妄想力を発揮してみました」 「小説って妄想でしょう? この作品に限られたことではないのでは?」 「そう言われてしまうと身も蓋もないですね……。でも、まあ、その通りなのかな……」 「結果、左くんの妄想力は危ない方向に向かう傾向があることがわかりましたね」 「そうなのかなぁ……そう言われると、そんな気がしてきました」 「その妄想が、社会に与える悪影響を考えてごらんなさい」 「そう大した影響は与えないと思いますよ。私ごときの妄想なんて」 「ま、そうですね。左くんごときの妄想ですもんね」 「『ごとき』って言うな!」 「左くんが言ったんでしょう? 三行前を振り返ってごらんなさい」 「あ、ホントだ。……自分で言うのは抵抗なくても、人に言われると腹が立つことってありますよね?」 「小さいなぁ~。そんなことで怒っちゃいけません! もっと大きな人物を目指して作品を書いてください。例えば、そうですねぇ……あの人みたいに……うーん、名前が出てこない」 「誰のことを思い出そうとしているんでしょうね……大人物は大勢いますからね」 「あー、膝まで出てきてるんですけどね」 「膝って……口に到達するのに時間がかかりそうですね?」 「ほら、あの、法の精神のおっちゃん」 「は?」 「ほら、ほら、三権分立を説いた、あのおっちゃん」 「フランスの哲学者のこと? おっちゃん呼ばわりするなんて、司さんくらいですよ、たぶん」 「そこまで分かってるなら名前、知ってるんでしょう? 教えてよ、左くんのケチ!」 「司さん、さっき言ってましたよ」 「うそォ、ぜんぜん思い出せないわ」 「私の“スイカ”はどんなふうに読めるんでしたっけ? サクッとじゃなくて……」 「えーと、それとこれとが関係あるの?」 「あります」 「えー、確か、ジャン、ジャック、ルソッと読める作品だ、と言ったと思います」 「キミ、わざとだろ?」 「え? 何が何が?」 「話を脱線させたら、あなたの右に出るモノはいないと思います」 「そう? いやあ、照れますね」 「褒めてません!」 「あ、ああッ!!!」 「な、なに、どうした?」 「思い出しました。ジョン・ロックです。イギリスの哲学者です。そーです、そーでしたそーでした。左くんもロックさんみたいな影響力のある人物になってください」 「間違っていると思いますよ。『法の精神』でしょう? 『三権分立』でしょう?」 「あれ? そう? 間違ってる? おかしいなあ」 「絶対にわかってて言ってますよね。そうやって楽しんでるんですよね。まあ、いつものことですけど、だいぶ『スイカ』から話がそれちゃいましたね。」 「と・に・か・く、わたしが言いたいのは、左くんには頑張って欲しい、ということですよ。きゃ! 言っちゃった! 照れりんこっ。てへっ」 「『りんこっ。てへっ』ときましたね。……その言葉、素直に受け取ってもいいのかな?」 「ホント、頑張ってください。ぷふふっ」 「笑いながら言われると、引っかかりますね」 「ダメですよ、そんなところで引っかかてちゃあ。小さなことは気にせずに、大きく生きてください! そしていつの日にか、左くんがおっちゃんを引き継いで『趣味論』の続きを書くことを願います」 「……何気に詳しいですよね、その人のこと」
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