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「蓮見さん今日仕事休みじゃないですか、何か予定ありますか?」 「なぜ?」 「予定何もなかったら水族館でも行きませんか?」 「・・・忙しいんだけど」 「何があるんですか?」 次々に洗われていく食器を拭いて片付けながら、俺は蓮見さんに聞く。 「いろいろあるのよ」 「いろいろって?」 「・・・浴室の蛍光灯を替えたり掃除をしたり・・・それに、せっかくの休日になぜ私があなたと水族館に行かなきゃいけないの?」 「気分転換も必要ですよ、いつもそんな険しい顔してたらせっかく可愛い顔してるのにいつか般若みたいになりますよ」 「黙って。元々こういう顔よ」 そう言う蓮見さんに交換用の新しい蛍光灯どこですか?と聞きながら、俺はリビングに置かれている新品の蛍光灯の箱を見つけた。 聞けばこれで合っているらしく浴室に向かう。 「・・・蓮見さんどうやって替えるつもりだったんだろう」 思わず一人呟いた。 浴槽の端に乗っても、届くか微妙な位置にある浴室の電気。 踏み台を使えば・・・という高さにある。 学生時代にあちらこちらの部活に顔を出し、体を動かすことが好きだったお陰か、はたまた遺伝か、よく伸びた身長がどうやら役に立つようだ。 「蓮見さんの身長だと踏み台使っても届かないんじゃないかな・・・」 「ねぇ、ひとり言までうるさいんだけど」 「はっ・・・!」 キッチンにいたはずの蓮見さんがそこにいた。 「あなたがいなかったら自分で替えてたんだから余計な心配よ」 「あ、あははは・・・」 「・・・なに?気持ち悪い・・・」 「いえ、なんでも・・・」 あからさまに不審な視線を俺に向け、蓮見さんは去って行った。 俺は蛍光灯を替え終わり、綺麗に掃除された浴室内を見回した。 「・・・」 「ねぇ、あちこち見ないで気持ち悪いから」 「はっ・・・!」 なぜバレてるんだ・・・ 行動を読まれている。 いつの間にか戻ってきていた蓮見さんに釘を刺されてしまう。 「あと、あなたのその、はっ・・・っていうの・・・」 お? 「・・・おかしいからやめて」 「!ちょっ蓮見さん、可愛いからもう1回笑って!」 「なんで、いやよ」 笑って、いや、笑ってよ!嫌だってば!! そんなやり取りをしながら、俺は蓮見さんが部屋中の掃除をするのを1時間ほど手伝った。 「ふぅ・・・」 一段落してソファーに体を沈めた。 元々汚さなんてなかった部屋だが、掃除機をかけてあちこち拭いて回るだけでさらに綺麗になった気がする。 俺も多少は役に立てただろうか。 「ねぇ」 ずいっと蓮見さんがバスタオルを俺に差し出した。 「え・・・?」 「シャワー浴びてきたら?」 「えっ・・・?!蓮見さんそれって・・・!!俺のことさそっ」 「ってないから。」 「ですよねぇ・・・」 俺はバスタオルを受け取る。 「・・・出かけるんでしょ、水族館」 「え?あ、はいっ」 「気が変わらないうちにシャワー浴びてきなさいよ」 ぷいっと背を向け、リビングの隣の部屋へと蓮見さんは姿を消した。
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