5:Rain dance

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「わ~俺仙台は初めてです!」 「はいはい、遠足じゃないですからね、迷子にならないようについて来て下さいね。」 新幹線を降り、駅弁に目を奪われる俺を置いてさっさと先を行く蓮見さん。 ついて来て、と言うことは・・・ 「・・・蓮見さん、仙台初めてじゃないんですか?」 「ええ、何回か平坂さんと来てるわ。」 切符を改札通し、蓮見さんはエスカレーターへと向かった。 「え、え、平坂さんと??何回も??」 「・・・何回も、って・・・何回もよ、何か??仕事で来ているのに、何か???」 俺の2段下に立つ蓮見さんは、いつものように面倒くさそうに俺を見上げ眉根を寄せた。 「だっ・・・何回も仙台で・・・公式にデートなんて」 「しーごーと!!あなたの頭どうなってるの?仕事よ、仕事。それに平坂さんは上司よ。」 「・・・会社の上司という『公式の立場』として認められて、会社のお金で堂々とお忍びみちのく仙台デートなんて・・・!」 「公式じゃない、会社ね。会社のお金って、きちんと経費よ、出張費。しかもお忍びじゃないわ、それこそ会社の出張という公式よ!あんたの頭どうなってんのよ・・・変な安っぽいタイトルまで付けて・・・ほんと・・・疲れるわ・・・」 「あ、それならまだ時間ありますし、どこかその辺りの休憩スポットというホテルなんて、って蓮見さん!!」 すでに蓮見さんの背は人波に紛れてしまっていた。 慌てて追いつき、声をかけようとした時、 「っぶな・・・大丈夫ですか?蓮見さん」 「・・・っ・・・」 スマホを見ながらスーツケースを引き、急ぎ足で向かってきた男にぶつかられた蓮見さんがバランスを崩して、背後にいた俺の胸に倒れ込んできた。 受け止められたおかげで、人込みの中硬いタイル張りの床に蓮見さんが倒れ込むことはなかったが、謝罪もなく立ち去った男に怒りがこみ上げる。 「痛いところないですか?」 咄嗟に掴んでしまった腕から手を離し返答を待つが、少し動揺した蓮見さんがぶつかられた肩と俺が触れた腕を自分の手でさすりながら、「大丈夫」と小さな声で答えた。 「すいません・・・どうしようもなくて・・・」 「いえ・・・悪かったわね・・・ありがとう・・・」 首を振りながら肩を抑え、ぎゅっと握る手は色が変わる程力が入っている。 「・・・蓮見さん、まだ時間ありますし、軽く何か食べませんか?」 「え・・・でも・・・」 「朝早かったですし、俺、小腹空いちゃったんでどこか店入りましょ。」 笑って近くのコーヒーショップを指さし、蓮見さんの前を行くと、渋々・・・というより、少し大人しくなってしまった蓮見さんが俺の後ろをついてきた。 店内はテイクアウトの客が多く、比較的席は空いていた。 珍しく甘いカフェオレの蓮見さんと、サンドイッチと珈琲の俺。 「蓮見さん、席別じゃなくて大丈夫ですか・・・?」 同行者・・・連れ合い・・・一緒に来た人・・・何が合っているかわからないけど、とにかく、対面の席を2つ利用するのは気が引けて、俺と蓮見さんは2人席に対面で座った。 「・・・・・・会社にいる時は隣なんだから、今の方が少し遠いからマシよ。」 嫌味に聞こえるのに、さっきぶつかられた精神的ダメージがあるのか、その声にはいつものトゲトゲしさはない。 マシ、と言いながら、以前に比べて距離感が少し縮まった気がする。 言ってしまったら警戒して怒られてしまうので、決して言わないけれど・・・と誓い、珈琲を啜った。
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