2:Don't approach.

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和弥の浮気には薄々気づいていたし、現場に遭遇しても「ああ、やっぱりか」と確信を得たくらいであまりショックもなかった。 何より、昨日からずっと蓮見さんに意識を持って行かれていた俺には好都合だった。 「嫌がらせじゃないですよ、言ってしまえば、ひとめぼれです。」 「・・・あんた、何寝ぼけたこと言ってんの?それに、彼氏って言ったわよね」 蓮見さんはクッションを掴み、抱きしめて顔を埋めた。 そして、ぶん投げた。 ボスッと音を立てて俺が受け止めたそれは、ふわふわした手触りの水色の丸いクッション。 「そういうのが、本当に嫌いなの・・・男とか女とか愛だとか恋だとか!近くにいるのも、触るのも、同じ空間にいるのも、男がいるのは会社だけで十分・・・私に関わらないでよ・・・」 「・・・俺さ、初体験は男と女の先輩カップルに中1の時に奪われたの。それからは男でも女でも相性が良ければ付き合ったし、付き合わなくてもセフレはいた。だから今回浮気されても別に平気だったの。でもこないだ蓮見さんと出会って、初めて女の事可愛いって思った。性欲の対象ってだけじゃなくて」 「・・・あんた、真面目な顔して話してるけど、内容最低だし最悪よ。」 「でも、それが俺だから仕方ないよ。最低でも最悪でも、今までの事は変えられないから、蓮見さんが嫌なら許してもらえるまで俺は触らない・・・。だから傍にいさせてほしい。」 「・・・そういうことじゃなくて・・・」 ピンポーン ピンポーン 「・・・」 「誰か来たよ、出なくていいの?」 「・・・いい・・・出なくていい。いいから・・・」 「・・・」 さっきまでの怒りは消え失せ、蓮見さんは膝を抱えて丸くなって座り、小さな手は色が色が変わるほど強く握られて小刻みに震えている。 ピンポーン、ピンポーン ドンッ! ドンッドンッ!! 「綾!!いるんだろ!!」 ビクッと体を震わせて、蓮見さんは耳を塞いだ。 「・・・はい、どちら様?」 俺はインターホンのスイッチをオンにした。 「ちょっ・・・」 いいから、と小声で伝え、俺は外にいる何者か分からない男の返答を待った。 「なんだ・・・?お前誰だ。綾はどうした!!いるんだろ?!」 「あぁもう、うるさいな、あんたこそどちら様?」 「綾は俺の女だ!綾を出せ!!」 話にならないな。 頭に血が上ってこっちの話は聞いちゃいない。 それに、うちの会社、社員寮のセキュリティザルじゃねぇか。 ・・・自分のことは棚に上げるけど。
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