Chapter1

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 花が用意できたら、次はそれを水に浸さなければならない。  ガラスの器に浅く水を入れ、散らした花びらを入れる。この時決して、器に髪の毛を落としてはいけない。人間の髪がついたものを天使は嫌がるから。  水に浸して五分もしたら、最後にメープル・シロップをかけてやる。  人間が天使を従える唯一の術は、このメープル・シロップと言っても過言ではない。ミハイル・G・ベイカーによれば、甘さ、匂い、触感。その全てが天界の雲と同じで、出されると天使は食べずにはいられないんだとか。 「砂糖くん。君は天使を育てて何を願うのですか」 「わからない……でも、売って金になればいいなと」 「ええ。それでいいのです。天使の力では、人の幸せは手に入らないんです。叶ったとしても、それは七つもいらないのです」  ガラスの器がもう少ない。買い出しに行こう。
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