Chapter2

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 喫茶店が趣味の小物売り、ティー。  俺がティーと出会ったのは、ハルベル岬からラシェラの山を経由してこの街に来る途中だった。  ティーはこの街からラシェラの山を経由して、ハルベル岬に向かう途中。行き先は真逆だったのに、何故か不思議と気が合った。 「葉っぱはね。地面に落ちたら土になるの」  最初のティーの言葉は、今でも覚えている。 「だからお湯に注いで、湯気を立てて、空に向かって飛ばしてあげるの……そうしたら葉っぱもね、きっと天国にいけるの」  茶葉を天国に送る小物売り、ティー。  俺が天使売りを始めた日、ティーは誰の許可も得ずに喫茶店を開いた。本業は小物売り。喫茶店はあくまで趣味……客は俺とミハイル・G・ベイカー。許可なく飲食店を作るのは違法だが、俺達が黙っていればいい話だった。 「天使が育ったらさ。叶えて欲しい願いがあるんだ」  初めて俺に紅茶を振舞った時。茶葉に湯を注ぐ瞬間、ティーは泣いていた。  穏やかに登る煙は、確かに天国に続く螺旋階段にも見えた。同時にそれを作っているティーが泣いているのは、どうにも不釣り合いな気もした。 「ローマンシャン(南の楽園)に畑を買って、そこをお茶でいっぱいにしたいな……」  その願いを叶える為に、俺はあと何匹の天使を育てればいいのだろうか。
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