21人が本棚に入れています
本棚に追加
紅茶とガラスの器の代金を払うと、俺は真っ先に家に戻った。
水晶の水槽の前に立つと、中の天使が俺を睨んだ。どうやら餌をお預けにしたことを根に持っているようだ。
餌の量が少ないと、翼が黒くなりやすい。天使の機嫌は重要だ。
ティーの店のガラスの器に、朝焼けを浴びたアサガオを入れて水に浸す。
これにメープル・シロップをかけてやれば、天使の食事の完成だ。水槽の隙間から餌台に置き、あとは勝手に食べるのを待つだけ。
「八月十四日未明。サンタガルカンドで捕獲された龍の体内から、成人男性と見られる白骨が発見されました。警察は先月から行方不明になっていた×××××氏のものではないかと見て、捜査を続けております……」
龍を捕らえたら、脂肪ごと鱗と皮を剥ぐ。
それから角や棘を抜き取って、肉を切り分けたら胃を裂く。
胃の中には貴重な鉱石や宝物が飲み込まれていることもあるし、時には人間の骨が出てくることもある。世の失踪者の一割程度は、そうして龍に食べられた者だ。
何気なしにつけたラジオからは、続けて天使の売買で逮捕された者のニュースが流れてくる。いつか俺も、どこかの番組で読まれる日が来るのだろう。
「G・ベイカーに聞くか……」
この天使を育てるべきか、それとも辞めるべきか。
翼が薄黒くなってきた今が決めどきだ。彼に聞いてみよう。
最初のコメントを投稿しよう!