Chapter3

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 ミハイル・G・ベイカーの息子のピーター・G・ベイカーは、十年前に龍に食べられて天国に行った。  それからG・ベイカーは天使を育てて、息子を復活させようとした。  しかし博打に失敗して片目の視力を失い、その後育てた天使達も、息子を完全に生き返らせることは出来なかった……それからというものの、彼は若い天使売りに天使の育て方を教えている。 「天使を育てる時には、下手な欲を持ってはいけないのです」  ティーからもらった林檎の紅茶をすすりながら、G・ベイカーはぼんやりと呟いた。 「こんな天使になって欲しい、こんな願いを叶えて欲しい。望みが大きければ大きくなるほど、思い通りにいかなかった時の悲しみは膨れてしまいます。天使にも限界があるのに、人間の欲はそれを容易く超えてしまう」  俺は空いたコップに、紅茶をもう一杯入れてやった。 「大切なのは、共に寄り添ってやることです。どのような姿になろうと、どのような形で願いを叶えようと。その全てを結果として受け止める。それが出来なければ、天使を扱うことは出来ません」  G・ベイカーはそう言って、ご馳走さまとコップを置いた。 「ねぇ砂糖くん」 「すべてが終わったら、ティーとローマンシャンに行きなさい」  ローマンシャン。南の楽園。  天使から貰える切符で行ける、幻の場所。
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