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Chapter5
天使売買の罪で逮捕された俺は、五ヶ月で釈放された。
虹色天使は押収されて、今はもう行方知れず。
だけどいいんだ。約束のローマンシャンへの片道切符。あれはちゃんと、出所した日に俺のポケットに入っていた。いつ入れたのかは知らないけれど。
「生きてる間にG・ベイカーの息子さん、復活させてあげればよかったのに」
「もう望んでいないよ。生き返っても、自分が先に死ぬことに気がついたんだ……息子が自分を復活させようと天使を求めたら、嫌だろうしね」
ローマンシャン行きの汽車は空いていた。
ランタマルト、イストウェンテン、東ユーラス……各駅停車で数時間の終点。昼寝でもしていれば、起きた場所がローマンシャンだそうだ。
ティーは店の荷物を売り払い、木の種を沢山買っていた。
畑を買うなら相当金が必要だろうに、種なんかに使っていいのかと尋ねると
「ローマンシャンはね、誰の土地でもないの。だから私が種を植えれば、そこが私の畑になるの……ねぇ砂糖。畑を買うってことはね、種を買うってことなんだよ。だって土地を買っても、植える種がないなら更地だもん」
大事そうに、大事そうに種を抱えるティー。
「必要な時に必要なものが使えればいいの。それにもう向こうは、ね……」
その時、汽車がゆっくりと停止する音がした。
車内の客は俺とティーだけ。煙を吹きながら扉が開くと、そこはもう終点。
……ローマンシャンに到着だ。
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