ケース2️⃣ 前世呪怨

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鬼切店長は、先日から貴志の事を心配してくれていたのだ。 「いいえ。俺一人だと、他人の前世を読み取る能力を開花させる事なんて絶対出来ませんでしたから。これも鬼切店長がアドバイスをくれたお陰です。ありがとうございます。」 貴志は改めて頭を下げ、礼を言う。 「何、改めて言ってるんだ。そんなに気を使うなよ。」 「それに、前世についても、かなり詳しく知る事が出来ましたし。」 貴志の話しを聞きながら、鬼切店長は更にレモネードを口へと運んでいく。 「俺これまで毎日、特に目標もなく、学校もただ通うだけで部活もしていないし。バイトはまあ、紹介してもらって働かせて頂いていますが。特にこれといって、何にもない人間だったんです。」 鬼切店長は、じっと見つめ黙って聞いていた。 「でも今回の件で、自分が前世を見れる能力がある事と、それによって人を助ける事が出来る、って実感出来たんです。」 それを聞いて、鬼切店長はニッコリと笑顔を見せる。貴志は、いつになく真剣な表情をしていた。 「俺は、これからもっともっと、この能力を活かして、色んな人を助ける事が出来るんじゃないかと思いまして。・・・何か、生意気かもしれませんけど。」 鬼切店長は、持っていたグラスをテーブルに置いて立ち上がる。そして、貴志の方へと目をやった。 「貴志が考えている事は、素晴らしい事だと思うよ。もしも特殊な能力を持っていたとしても、それを他人助けに使わない人もいる。また逆に、その能力を悪い事に使うヤツだっているかもしれない。」 貴志はピリリと緊張した様子で、ソファから少し見上げた目線で鬼切店長を見ている。 「だがな、貴志。一つだけ、忘れてはならない。」 鬼切店長は、いつもとは違う厳しい顔つきになり、そして貴志に忠告した。 「”前世“ に対して、理解していない人。信じていない人。”前世“ なんて存在しないと思っている人。そんな人も必ずいるんだ、という事を絶対に忘れてはならない。」 その凄みのある鬼切店長の言葉と雰囲気に、貴志は思わず、返答するしかなかった。 「は、はい。」
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