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それでも、そのうちの一人がまた言いにくそうにしながら反撃してきた。
「それでも、俺たちから見た感じが、オバちゃんなんよ。」
叶恵は、いよいよ落雷の如くに、牙を剥き出したような顔になる。
「まだ言うか!お前たち、もうたこ焼き食べなくてイイよ。焼いてやらんからな!」
その一言に、急に困った様子で弱気な態度になり、不良たちは顔を見合わせて口々に言った。
「いや、すいません。たこ焼き、食べます。」
「お前らも、ほら金出せよ!」
「じゃあ、たこ焼き、3つで。」
叶恵は、怖い目つきのまま、不良たちに手を差し出す。その手の平の中に、不良たちは自分の持っている、たこ焼き代を次々と置いた。
その金額をジロリと確認した後、叶恵が言う。
「よし!・・・じゃあ、たこ焼き3つね!」
この応答で、やっとたこ焼きの受付が認められ、作られはじめた。
その間、店先で待っている不良たちは、時間を持て余し、所々で店主の叶恵に話しかける。
「あのう。そのう。何で、たこ焼きハウス、エリーゼって名前なの?」
たこ焼きを鋭利な道具で引っくり返しながら、叶恵は質問に答えた。
「あのね。人は前世っていうのがあって、皆生まれ変わりがある。私も昔、前世を見てもらったら、どうやらヨーロッパに住んでいたみたいなのよ。」
その話を聞いて不良たちは、やや歓喜のざわつきに変わり、口々に喋る。
「おお、前世!」
「ヨーロッパ⁈ マジで⁈」
「いや、ヨーロッパって感じじゃなくて、どこかの田舎の村でしょ、絶対!」
叶恵が舌打ちして、また怖い顔になった。
「お前たち、たこ焼きの中に、何が入っても知らないよ。タコ以外に何を入れるか?」
慌てて謝り、訂正をする不良たち。
「あ、いや、すいません。冗談です。」
「普通のたこ焼き、作ってください。」
その言葉を聞いて、また徐々に穏やかな表情に戻る叶恵。そして、話しの続きをした。
「そのヨーロッパでね、私の名前がエリーゼだったらしいのよ。」
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