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途端に、不良が聞き返した。
「それで、店の名前をエリーゼにしたんですか?」
叶恵は、どうだ、と言わんばかりに、自信に満ち溢れたような顔をして答える。
「そういう事。」
不良たちは、またお互い顔を見合わせた。
「でも、やっぱりなあ。エリーゼはなぁ。」
「たこ焼き屋は、やっぱり八っちゃん、とかの方がイイでしょ。」
「何か、合わないんだよなあ。」
また叶恵の顔が、曇り空へと変貌していき、不良たちを睨みつける。
「お前たち、タコの他に何を入れるかあ?」
すぐに、不良たちはまた謝った。
「あ、いや、すいませんでした。タコだけで充分です。」
そんな事をやっている間に、テキパキと叶恵は慣れた手付きで、もうたこ焼きをパックに入れていく工程だった。そうして、3パックのたこ焼きが袋に入れられると、早々に不良の一人が手を伸ばした。
叶恵も、そのたこ焼きの入った袋を手渡す為に差し出すが、敢えてすぐには渡そうとせずに、手を放さない。
その行動に困った不良は、叶恵の顔を見直した。叶恵が呟くように言う。
「あのね、私はたこ焼き屋と、占いもやってるんだよ。」
黙って聞いている不良たち。
「もし、私の事や、このたこ焼きハウス、エリーゼの文句を言うようなら、・・・。」
手を差し出したまま、静止している不良。
叶恵の目がキラリと光った気がした。
「・・呪いをかけるよ。」
その言葉を聞いて不良たちは、たこ焼きをやっと受け取った後、大声で騒ぐ。
「おい、呪いだってよ。」
「そんな事、出来るわけねえだろ。」
「たこ焼きも、もう受け取ったんだし。関係ねえよ。」
だがすぐに、不良のうちの一人が深刻そうに言った。
「いや待てよ。そう言えば、聞いた事がある。ほら、京子たちがこの前、言ってたんだよ。たこ焼き屋が占いをしてくれて、それが凄く当たるんだって。」
「マジか⁈ このたこ焼き屋か?」
「やばい!文句言ったら、本当に呪いをかけられるぞ。」
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