20人が本棚に入れています
本棚に追加
店先で騒ぐ不良たちを冷ややかな目で見つめる叶恵。
不良たちは慌てて謝る。
「すいませんでした。呪いはかけないでください。」
そう言うと、早々にこの場を歩き去っていく。
そして不良たちは、随分と待ちくたびれていたのか、すぐにたこ焼きのパックを開け、それぞれ食べながら歩いていった。
すると、店からおよそ10メートル程離れた辺りで、突然大声で騒ぎながら、たこ焼きを口から吐き出す不良たちが見える。
「うえっ!何だ、このたこ焼き!メチャクチャ辛い!辛すぎる!水〜!」
店内でそれを確認した叶恵が、満足そうな表情で、一人ボソリと呟いた。
「不良ども。大好きだろ、唐辛子。」
それから、どれぐらいの時間が経っただろう。店の中で雑誌を読みながら、寛いでいる叶恵の姿があった。客が来ない時は、大概こうやって過ごしているのだ。
今まで雑誌に目をやっていた叶恵が、ふと何かに気が付き、店の外へと目を移す。
店から約5、6メートルの所に、一人の少女が立ったまま、こちらをじっと見つめていた。彼女は電柱の側に立ち、長い黒髪で、しかも真っ黒なワンピースを着ている。肌は透き通るような色白で、この位置から見ても綺麗な娘だと分かった。
叶恵もじっとそのまま、その少女を見ていたが、彼女も一向に動く様子もなく、ただこちらをじっと見ている事に疑問を抱く。
程なくして叶恵は、もしやたこ焼きを買いに来たのだけど、勇気がなくて店まで来れないのではないか、と思い、気を利かせて声をかけてみた。
「いらっしゃ〜い!どうぞ!たこ焼きありますよ〜!」
しかし、少女は何も言わず、身動きする事もなく、その場に立ったままだった。
仕方なく叶恵は、手に持っていた雑誌を側のテーブル台の上に置いて立ち上がり、調理場からカウンター台を横切り、店の表まで出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!