ケース2️⃣ 前世呪怨

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すると不思議な事に、先程までいたはずの少女の姿はどこにもなく、忽然と消えている。慌てて辺りを見渡したが、少女どころか人の姿すら誰もなかった。 叶恵はまるで、キツネかタヌキにでも抓《つま》まれたような気分になる。 「おかしいねえ・・。」 一人ポツリと呟いて、店の中に戻ろうとすると、ちょうど貴志が歩いて帰ってきた。 「ただいま。どうしたの? 変な顔して。」 叶恵は、舌打ちして言い返す。 「変な顔は生まれつきだよ。放っておいておくれ。」 「何か、機嫌悪いなあ。」 貴志が店の入口に入り、続いて叶恵も中に入り、二人は店の奥へと進む。 「たった今ね、そこに女の子がいたんだけど、見かけなかったかい?」 「いいや。女の子なんて、すれ違わなかったけど。」 貴志は、居間へと上がり、そのまま台所へと行った。叶恵も続いて居間に上がる。 「黒い服を着た女の子だよ。」 「黒い服も赤い服も、女の子自体にすれ違っていないよ。」 そう答えながら、貴志は冷蔵庫から麦茶の入った容器を取り出した。納得がいかず、考え込む叶恵。 「おかしいねえ。」 麦茶をコップに注ぎながら、呑気そうに貴志が言う。 「幽霊でも見たんじゃないの?」 「お前も知ってるだろ。私は元々、日頃から霊を見ているんだから、現実の人間と間違うはずないよ。あれは、確かに人間だった。」 貴志は、一気にコップの麦茶を飲み干した。 「じゃあ、幻を見たんじゃないの?」 「幻?」 叶恵は、まだ府に落ちないといった感じの顔をする。 「ほら。タコの化身だよ。毎日タコを焼いてるから、タコが人間の姿になって、化けて出てきたんだよ。」 「はぁ⁈」 ますます、ムキになって貴志を睨みつける叶恵。それでも貴志は、ふざけてみせた。 「タコのお化けなんて、怖すぎる〜。」 「こら、貴志!」 貴志は、笑いながら、二階へと逃げ去っていく。 居間に残った叶恵は、首を傾げながら、自分の肩を揉んだ。
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