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ここは、スーパーマーケット。看板に、「スーパーエブリィ」と書いている。
夕陽が沈みかけ、辺りは薄暗くなってきていたが、いよいよ来客が増えてきていた。
スーパーの裏倉庫から台車を押しながら現れるアルバイト女子高生、山口 美咲。
「今日も、お客が多いな。貴志くんは今日バイト休みだから、フルスピードで残り頑張らないと。」
そんな事をポツリと独り言を言った時、話しかけてきた人物がいた。
「ねえ、ねえ。美咲ちゃん。」
美咲は、立ち止まる。
見ると、このスーパーの店員の小太りの男だった。黙っている美咲の元へ、似合わない笑顔で近づいてくる。
「美咲ちゃん。今度、二人でカラオケに行かない?」
突然の予期しない誘いに、美咲は一瞬戸惑いを見せたが、その後凛とした態度のまま返事をした。
「最近、友達とカラオケに行ったので、行きません。」
美咲の頭の中を、疑問と嫌悪感が混合されていく。このスーパーにアルバイトで入った時既に、この小太り男は正社員として働いていた。普段から挨拶程度は交わし、何度か仕事に関して一言二言話した記憶はあったが、それ以外は繋がりがなく、ほとんど会話などした事がなかったのだ。それが今日は、どうした事だろう。
しかし全く懲りない様子で、小太りの男が話し続ける。
「そうなんだ。じゃあさ、焼肉行かない? 凄く美味しい焼肉屋があるんだよ。」
美咲は、相変わらずキリリとした目つきと、警戒心を解かない態度を貫いた。
「いいえ。最近、ダイエット始めたんで、行きません。」
小太りの男は、さらに執拗に投げかけてくる。
「ダイエット良いよねえ。大事だよね。俺も、そろそろダイエット始めようかと思ってるんだ。」
それに対しては、冷たい視線のまま、美咲は返答しなかった。小太りの男の顔は、いよいよイヤらしいような表情で見回してくる。
「俺さ、今はまだ店員だけど、いずれこのスーパーの店長になろうかと思ってるんだ。いずれ任されるのは俺しかいないでしょ。」
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