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突然、明かされた真実に、黒木家一同はまだ信じられずに困惑していたが、まず宗一郎が口を開いた。
「・・とりあえず、この事が分かった以上、放っておくわけにはいかない。真理。まず警察に行くんだ。」
そう言われて、涙を拭いていた真理が返答する。
「・・・そうよね。その通りね。分かったわ。」
葵は堪らず、泣きながら真理の身体にしがみついた。
「ママ〜〜〜イヤだあ〜!」
真理は、泣きつく葵の顔を見ながら、説得する。
「葵。分かって。これは、私がしてしまった事。罪は償わなければならないのよ。」
それでも泣きながら、葵が言う。
「私が悪かったの? 前世なんか知らなければ。前世なんか見なければ。ママ〜!」
「違うわ。それは、違う。私が犯した罪なのよ。」
嗚咽しながら、俯く葵。
英彦も、涙を拭いながら言った。
「では、わたくしは、車を出せるよう準備してきます。」
そうして、リビングを出ていく。
「私も、部屋ですぐに準備してくるわ。葵。ここで待っていて。」
葵を説得した後、真理もリビングを後にした。
リビングに残った葵と宗一郎。
また葵が泣きながら、宗一郎に駆け寄った。
「パパ。ごめんなさい。私が前世なんか知ろうとしたせいで・・・。」
「何言ってるんだ、葵。ママも言っていただろ。葵のせいじゃないんだよ。」
宗一郎が慰めた。
「違う。私がいけなかったの。前世なんか調べたりしなくても、真実なんか知らなくても良かった。それまでの私たち家族は、充分幸せだった。」
宗一郎と葵は抱きしめ合った。
そして、そっと宗一郎が尋ねる。
「でも、さっき後ろから話しかけてきたのは、・・・明日香、だったんだろ?」
葵が、宗一郎を見つめた。
「私の中に、前の奥さんだった、明日香さんの記憶が蘇ったの。」
宗一郎の目からも涙が溢れる。
「明日香が亡くなって、ずっと寂しかった。生きる希望を失い、何をして生きていけばいいか。いつも展望台に行ってみては、明日香の事を思い出していた。何度か、いっそのこと俺も死んでしまったほうが・・・と思ったが、結局死ぬ勇気さえなかったんだ。」
また、宗一郎と葵は抱き合っていた。
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