20人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、真理は警察へと出頭し、これから裁判等によりその罪への刑に服することになる・・・。
それから、一ヶ月程が経った。
心地よい気候の中、展望台の頂上から景色を眺める宗一郎と葵の姿がある。
葵が少し笑顔を出して言った。
「パパ。きっとママは帰ってくるよね。」
宗一郎も、微笑んで答える。
「そうだな。ママはきっと帰ってくるよ。」
二人は、この展望台から広がる景色に包まれながら、いつまでも眺めているのだった。
ふと、駅のホームに立つ貴志と叶恵がいた。
その近くに大友 英彦の姿がある。
大きなスーツケースを二つ両手に持ち、頭を下げた。
「どうしても行くんですね。」
貴志が聞く。
「あ、はい。社長と葵さんにも、お話して承諾して頂きましたから。」
横から叶恵が嫌味混じりで言った。
「確かに私が占ってやって、やってみれば成功する、って言いましたけど。あの〜、時期がですね。私は、春頃ってきちんと言いましたよね?」
そう言われて、英彦は苦笑する。
「はい。言いましたけど。あの私、占いを聞いたから、今回自分の夢をもう一度やってみようと思ったのではないんです。」
貴志と叶恵は、黙って聞いていた。
「占いや何かに頼るのではなく、この先の自分自身の人生、自分の力で描いていこうって思ったんです。だから急ではあったんですが、即実行しようと決めたんです。この年齢ですし、限られた時間の中で、納得のいく幸せってものをもう一度探してみようと思いまして。」
貴志は、ニッコリ笑い返して言う。
「素晴らしい事だと思います。」
叶恵もまた嫌味を込めて言った。
「ちょっと、私の占いを無視しているのは、気に食わないけど。」
そこで、三人は笑いあう。
そして、英彦は再び、二人に深く頭を下げた。
「本当に色々とありがとうございました。では、またいつか。」
そう言って、英彦は列車に乗る。まだ空いている扉から、じっと見つめている英彦。
最初のコメントを投稿しよう!