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貴志が何気なく、英彦へ言った。
「あのう、大友さん。幸せの形の一つとして、あなたも明日香さんの事が好・・・。」
と言ったところで、列車のドアが閉まるベルが大きく鳴り響き、その言葉を打ち消した。
慌てて、英彦が聞き返す。
「え? 何です?」
「あ、・・・いいえ。」
と貴志は口籠もり、敢えてもう一度尋ねなかった。
そして、列車のドアが閉まる。
窓ガラス越しに二人を見つめながら、英彦を乗せた列車はゆっくりと走り出していった。
列車をいつまでも見送る二人。
貴志が呟いた。
「大友さんの、・・彼の夢が、ここから始まるんだね。」
叶恵は、何も言わずに静かに頷くのだった。
———— ケース3に続く ————————
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