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ケース2️⃣ 前世呪怨
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在するものとは関係ありません。
「いらっしゃ〜い‼︎」
いつものように、快活な声が響き渡る。
ここは、『たこ焼きハウス エリーゼ』。
店先にやってきたのは、男子高校生3人。彼らは、いわゆる不良と呼ばれるべき格好をしている。
3人とも、眉毛を爪楊枝ほどの細さに剃り込み、髪はといえば、うち一人は紅葉したイチョウの葉のように黄色く、もう一人はハリネズミの背中のようにツンツンと尖り、残り一人もパンチパーマというデザインに仕上がっていた。
そのうちの一人が、早速声をかけてくる。
「オバちゃん!たこ焼き、ある?」
そう言われて、つい今しがたまで機嫌良くしていた店主の叶恵が、急に夕立ち前の曇り空のような表情へと変わった。
「は? お姉さん、でしょ⁈」
その思わぬ口調ぶりと、堂々と自分自身の事を若いお姉さんなのだ、と言い切れる店主の態度に、一瞬不良たちは面食らう。そして気を取り直して、そのうちの一人が言い寄ってきた。
「いやいや、オバちゃんだろ〜!」
ついで、別のもう一人も口を挟む。
「オバちゃん。そんなん、どうでもイイから、たこ焼き頂戴!」
叶恵は、全く負けず劣らずで不良たちを睨み返した。
「たこ焼き屋のお姉さん、でしょ⁈」
不良の一人が聞き返す。
「じゃあ、オバちゃん。年はいくつ?」
叶恵は腕組みして、キリリと姿勢を正し直して答えた。
「42!」
途端に、不良たちは転げるようにして笑いだす。
「やっぱり、オバちゃんだろ!」
それに対して、まるで曇り空から一変し、雷鳴が轟くかの如く、さらに怒りを強める叶恵。
「あのな〜、50歳までは、お姉さんなの!そういうふうに、厚生労働省がきちんと正式に定めたのを知らんのか‼︎」
不良たちは笑いをやめ、お互い顔を見合わせながら、口々に言う。
「え? 本当に⁈ お前、そんな事、知ってた?」
「いや、知らん。初めて聞いた。」
「学校の授業で、そんな事、言ってたか?」
「俺、いつも寝てるか、ほとんどサボってるから知らんぞ。」
そんな戸惑っている不良たちに、叶恵が言い放った。
「お前たち、しっかり勉強せんか‼︎」
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