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「さっきと同じ話になるけどさ、一緒に暮らせばいいじゃん」
「うーん、いずれはその方がいいんだろうなとは思ってるんだけどね……」
今日は昼食のときからずっとその話題だった。
彼は高校の頃、母親と大喧嘩をして家を飛び出し、それ以来絶縁状態になっていた。
本当は大喧嘩なんていう簡単な事情ではないけれど、ここではあまり詳しく書かないでおく。
ところが先日、実家の近くに住んでいる彼の姉から連絡があり、母親が会いたいと言っているということだった。
これも詳しくは書けないけれど、仲直りして実家に帰ってきてほしいということらしかった。
(仲直りという言葉もちょっと違う気がするけど、ここでは便宜上、そういうことにしておく)
彼自身、年を経て母親に対する思いが変わってきているようだったし、まだ独身で、実家からでも職場に通勤可能、傍から話を聞いている分には、彼が決心さえすれば何の障害もなさそうな、いい話に思えた。
店に流れる音楽は、弦楽セレナーデが終わって、スメタナのモルダウに変わっていた。
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