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それから一ヶ月ぐらい経った頃、彼からメッセージが届いた。
実家で両親と同居することにしたという。
今住んでいる部屋の契約もあるので、少しずつ荷持を実家に移しながら、完全に実家で暮らすのは来年からということだった。
彼が家を飛び出すまで使っていた勉強机がそのまま置いてあったそうで、その写真も送られてきた。
僕は机の上に何かが置かれていることに気づいて、写真を拡大してみた。
そこには、クーベリックとチェコフィルの『わが祖国』のCDが置かれていた。
あのときマスターは、本当に僕の想像通りの思いでモルダウを選んだのか、結局確かめていないからわからない。
でも、それはもうどうでもいいことだ。
クーベリックのモルダウに背中を押されて、二十年ぶりの生活をリスタートさせる人がいる。
それだけは確かなのだから。
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