第1話 哲朗の場合

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※あらすじはブラックジャック第1話よりパクりました。 哲朗は部屋のドアを閉めると、深く溜息をついた。 「はー。やってらんねえ」 哲朗は今日、20年ぶりに家から外へ出たのだった。ハローワークへ行ってきたのだが、哲朗の眼鏡にかなう仕事はなかった。いや、選り好みしなければ、あるのだ。だが大学院卒というプライドが邪魔をして、工場の流れ作業とか警備員なんかの仕事は受け付けられないのだった。 大学院を出て化学メーカーの研究職に就いた。哲朗は大学院では優秀な研究者だったが、会社では通用しなかった。理屈っぽく、機転の利かない哲朗はしばしば、上司を怒らせた。 同期は、失敗してもめげずにどんどん質問し、くらいついていくのだが、哲朗は一度注意されるともう、駄目だった。同期とどんどん差が開いていった。哲朗は彼らに教えを乞うこともできなかった。 そのうち、社員全員が自分を笑っているような気がしてきて、会社に行けなくなった。推薦状を書いてくれた教授に会わす顔が無く、大学に戻り研究を続ける勇気も出なかった。以来20年、哲朗はずっと家にいる。 仕事を探さなければ、とは、何度も思った。でも、また失敗して笑われたらどうしよう、と思うと、足がすくんで動けないのである。
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