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だが両親ももう年だ。74歳の父親は60歳で退職したあと、いくつかの仕事を経て、現在はシルバー人材センターに登録し、草刈りやペンキ塗りの仕事をしている。
71歳の母親も若い頃からずっと服のお直しの内職をしている。彼らの自分に向ける目が年々、厳しくなってきているのは否応にも分かる。盆と正月に帰ってくる妹は口も聞いてくれない。
哲朗は、両親がいなくなった後のことを考えるとぞっとしてき、ようやく重い腰を上げたのだった。ネットでいくつかの在宅勤務可の仕事に応募し、職務経歴書を送ったが、梨のつぶてであった。
色々調べているうちにハローワークに自分のような経歴の人間の職務支援をする窓口があることを知り、哲朗は勇気を振り絞り、今日、電車で20分先のハローワークへ行ったのだった。
担当の男はいちおうは哲朗の話を聞いてくれた。だが、うちでも在宅勤務の仕事を扱っているけれども大変人気で、今のところ求人が無いと言った。代わりに男が紹介してくれた会社の中に、りんどう園の名前があった。
「ここって知的障碍者の施設じゃんか…絶対やめとこう」
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