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哲朗はゲーム機の電源を入れ、ゲームを始めた。
ふと、背中に冷たい風を感じ、振り返った。
視線の先の窓が開いており、その前に、大男が立っていた。
「ひぃっ。ど、どこから入ってきたんですか!」
「鉄拳制裁・世直し次郎、参上」
男は一語一語を噛みしめるようにして、名乗った。
哲朗は両親を呼ぼうと思ったが、日頃全く口を聞かないものだから、こういう時でも助けを呼べないのだった。食事は部屋の前に置かれ、食べ終わった皿を同じところに置いておく。風呂は両親が寝静まった深夜に入る。風呂場で洗濯を行い、部屋干しにする。会話は、食卓にメモを置く。
哲朗は男に向き直った。
80年代のヤンキーが着ていたような長ラン。右手に鉄パイプ、左手にはぺったんこに潰した学生カバン。足元は、エナメルのトンガリ靴。身長は、180㎝はあろうか。金髪の、顎までのおかっぱに、前髪は女子高生のようなパッツンだ。
サングラスをかけているので表情が見えないが、中年の東洋人だろうことは、肌の色とざらざらした感じからはっきりと分かった。長ランを着ているが、まるで高校生には見えない。50過ぎの、おっさんにしか見えない。
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