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僕は、絵を描くことを思いついた。
もちろん、それはフィリップの絵だ。
(いや、違う……
彼の瞳は、もっとこう……)
まだ一度も見た事のないフィリップの顔を想像しながら、僕は彼を描いた。
(そうだ…これだ!)
何度も描き直した後に、僕は自分でも驚く程に、納得のいく顔が描けた。
精悍で誠実で、それでいて優しく……
最後に僕はふと思い出したんだ。
彼の瞳にはなんとも言えない寂しさが宿っていたことを。
それを表現するのは簡単なことではなかったけれど、描き上がったその顔は、まさに僕のイメージ通りのフィリップだった。
森の中で、剣を構える逞しい彼の姿に、僕は見惚れた。
毎日、細心の注意を払って色を塗り、絵の中のフィリップに少しずつ命を吹き込んでいった。
「出来たっ!」
ようやく完成したフィリップの絵に、僕は興奮を押えられなかった。
(フィリップ……)
あぁ、僕はやっぱりどうかしている。
どうして、こんなにも彼に惹かれてしまうんだろう。
完成した絵の前で僕は、嬉しさと苦しさを同時に感じた。
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